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    宇宙での 生活その他を 適当に
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恒星日誌 その8

~修羅場~


「副長、航路を方位3-3-1に取れ。Cardariの未探査宙域に突入する」
「提督、保険に入ったからって無茶はいけませんぜ、命短し恋せよ乙女ですぜ」
「恋するチャンスがある位なら宇宙には出ない。さっさとワープドライブ起動だ」

我々Augoror級クルーザー「新高山」の一行は未知の探査宙域、つまりは、
セキュリティレベル0の宙域に突入し、まだ見ぬ強力な敵艦艇を今一度確認
する為に航行を開始。前日、屈辱的撤退を強いられた宙域に向けリベンジ
を行うのだ。今回ばかりは命は捨ててある、全てを捨て、今の私に残った物は
この軽巡洋艦とクルー、そして、死に立ち向かう勇気だ。

「総員、20分で遺書を書き亜空間通信で送っておけ、ゲートを通過した直後
 から外部への通信一切これ禁止とする。諸君の健闘を祈る。勿論私にもだ」
船体が轟音を上げゲートに吸い込まれる。戦いは既に始まっている、命を散華
させる覚悟はあるが犬死する気は無い。最悪でも勝てる戦場を選択する武運
が我々にあらん事を。


「提督、ジャンプアウト完了。P3E-N宙域に到達、、、どうしやしょうか?」
「SolarSystemInfoを照合し最寄のアステロイドにワープ開始。全砲門、全支援
 システムの予備起動開始。ワープアウトと共に全周囲警戒、総員、戦闘配置!」
ワープホールの歪曲した空間の波が我々を狂気の戦場へといざなう。果たして、
この景色、生きてまた見る事は出来るだろうか。。人生最後になるかも知れない
ワープを終えると目の前にはレアメタルを贅沢に散りばめた、宝石の首飾りの様な
アステロイドが広がっている。。だが、そんな風景も次の瞬間、ただの戦場になった。

「重力波レーダーに感あり!11時上空43kmに大型戦闘艇のエネルギーを探知」
「照合の結果CardariのOsplay級巡洋艦と確認」
「敵ハードポイント合計9基にエネルギー集約を確認」
艦内が鳥かごをつついたような慌しさだ、そりゃそうだ、初めてのセキュリティ0空間の、
しかも初めての、対巡洋艦戦闘だ。だが、日頃の訓練のお陰で素晴らしく正確に、
そして素早くこちらが必要な情報を全て集め、戦闘開始の合図を待つに至った。
「提督、逃げるなら最後のチャンスですがね、とりあえず命令を」

「航宙士、最大船速で戦闘機動開始、砲戦距離を18kmに保持しつつ回避せよ。
 砲雷長、1番2番3番砲塔、最近距離の敵大巡に照準、ロック完了と同時に全力
 で射撃を開始、他の敵艦との距離を比較し、最も距離のせばまったターゲットに
 随時攻撃を移行せよ。機関長それに整備班長、シールドブースター起動開始、
 不測の事態に備えアーマーリペアシステムスタンバイ」
艦内が非常灯に切り替わる。皆の血色が変わる。
「探査室より報告、10秒後に150mm連装レールガンの攻撃、来ます」

私は深く息を吸い、そして言葉を吐いた。
「攻撃開始」
我々は宇宙海賊に正義の剣を振り下ろした。




私の一声で巡洋艦は殺戮の炎を撒き散らす鋼鉄の要塞と化した。
もはや後には戻れない。勝利か、死だ。
オペレーションパネルの端に展開したOsplay級の性能諸元を参照する。シールドや
その他諸々の防衛機構はこのAugororを余裕で凌駕するのか。。だが我々には、
レーザー砲の超長距離射撃という武器がある。上手く回避機動を取りつつ砲戦距離
を一定に保てば勝機は見えるはずだ。
敵のレールガンがシールド障壁に直撃するたび、艦内は釣鐘を叩いたような衝撃が
走り回る。くそ、シェルショックになりそうだ。

「敵大巡1隻に炎柱を確認!小爆発を起こしている模様」
どうやら敵1隻のシールド障壁を完全に打ち破り本体に損傷を与え始める事が出来た
らしい、こんなオンボロでも、頑張れば戦えるという事か。
「炎上中の敵巡に攻撃を継続、砲門1基を停止、シールドブースターフル稼働」
白濁したジェネレータフィールドに包まれ、Augororはシールドを徐々に回復する。
とは言え、1発で5ゲージものシールドを持ち去る敵のレールガン、早めに1隻でも撃沈
しないと勝ち目はないのだ。

戦闘開始から5分、最初の焦りと高揚が入り混じった艦内の空気は落ち着きを取り戻し
全員が戦況を完全に、冷静に受け止め始めたとき、我々のミドルレーザーの最後の1撃
で第1目標の敵巡洋艦が大傾斜と共に爆発した。
「敵Osplay級巡洋艦1隻を撃沈!」
艦内に歓声が上がる、良いぞ、この空気、勝ち始めている。
「提督、こりゃぁ行けますぜ」
「副長の言う通りだ、我々は勝利を掴み始めている」
巡洋艦1隻を撃沈した事で敵の火力は単純に3割減った。シールドブースターが損壊する
程にフル稼働させる必要も無く、変わりに全砲門を常時フル稼働させる事が可能になった。
ただ、相変わらず1撃20ダメージ前後の強烈なレールガンは浴びているのだが。

残りの2隻に狙いを定め、我々は宇宙の深淵を駆け抜ける。
この戦い、生還出来るならば、我々は確実に強くなり、そして、この宇宙でも我々は通用
するのだという自信を胸にステーションに凱旋する事が出来るだろう。
明日を力強く生きる為に、我々は今日を死に急ぐ。

「次なる標的に全砲門を集中せよ」




敵艦隊は友軍宇宙船を1隻撃沈された事で本気になったようだ。
こちらのクルーザーに急速接近を開始し、砲戦距離は12kmまで狭まった。
「提督、機関長から報告ですぜ」
「繋げ」
「こちら機関室、どうやらエンジンが外部からの何か妨害でおかしくなってるようだ」
電子管制官の報告で、それが敵巡洋艦の妨害機器によるものと判明した。
「こちらメインデッキ、状況の打開はこちらで何とかするから引き続きエンジンを見てくれ」
「了解、カマ炊きはこのままやっとくぞ」

敵のお陰で通常の最大船速、秒速173mから一気に秒速33mまで減らされた。
敵のレールガンの最大ダメージ効果を期待できる間合いにまで一気に近づこうという
事か、そういう小手先の三文手品というか卑怯な兵法は私は嫌いであり、更に眼前
で私自身に喰らわせてくれたという事で私は怒髪天を衝く勢いで命令した。
「相手の策略に乗って敵艦隊から5kmまで接近し軌道周回開始。ボコボコにしろ」
「ボコボコにされますよ」
「じゃぁあっちをボコボコボコにすればいい」

宇宙空間での壮絶なタイマンが始まった。互いのメインデッキが見える距離での射撃だ。
一撃60ダメージのクリティカルの連発に、シールドブースターが悲鳴をあげる。
2隻目を撃沈せしめた所で敵機のエンジン駆動妨害が解けた。
「全速で距離を開けて船体ダメージを復旧せよ、全砲門、最終目標に攻撃開始」
1対1になってしまばこちらの物である。新たなる敵艦隊が出現するまで、僅かな時間しか
残されていないという事が解ったのでとりあえずアステロイドと正反対に航行を開始。
130km程までアステロイドから離れつつ、最後の敵をひきつけ、もはや敵に援軍の
助けを得られない状況で反撃開始。

こちらのフレームも相手のレールガンによってビリビリに引き裂かれているが、相手の船
もこちらのレーザーによって既に半溶解状態だ。敵の増援が143km彼方に出現を
したころ、我々は敵巡洋艦に最後の1撃を叩き込み、初の巡洋艦対決を終えた。
敵の増援艦隊はこちらの追撃を行う気は無いらしい。戦闘を終え、戦いの緊張に皆は
疲れ果てている。宇宙コーヒーをすすりつつ、戦利品を確認し、さらに巡洋艦1隻につき
2万Iskもの賞金が私の口座に振り込まれたらしい。まぁ金なんざ、今はどうでもいい。
巡洋艦艦隊と正面から撃ち合って、辛くもだが、勝利を収めた事への余韻に浸れると
いう、今、自分がこうして生き残ってそれを感じられるという事実が何よりの報酬だ。




「・・・副長、これでやっと、我々は1人前になれたかな?」
「まぁたぶん、宇宙戦士としての筆降ろしは済みやしたぜ。あぁ、あと、管制官より報告。
 亜空間通信でコンコルドからメッセージが届いています」
「・・・・再生してくれ」
「:こちらはコンコルド第7西辺境銀河防衛革命勝利艦隊統一中央指令本部、通称、第7本部だ:」
「最初から略せよ。。。」

「:この度のDKSN提督の働き、普段の貴君の行いからすれば目を疑うほどに誠に
 見事な戦いであった。よって、その功績により貴君のセキュリティステータスを微量
 であるが上昇させる事に決定した。銀河の平和に貢献した事をここに感謝する:」

「・・・航海士、方位1-8-3に進路変更、SL0.3のステーションに寄港する。ご苦労だった」

我々は生き残る事で、新たな死に場所を手に入れた。

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